
「最近、親の言動に“あれ?”って思うことが増えた」

「介護ってほどじゃないけど…なんだか心がざわつく」
そんなふうに感じたことはありませんか?
例えば、母親が最近よく鍵をどこに置いたかわからなくなるとか、父親がとても怒りっぽくなったり、昔話を何度も繰り返すようになったとか。
一見大きな問題じゃないように見えても、こうした変化は確かに、私たちの心にじわじわと重くのしかかってきます。
50代を迎え、親も自分も人生の折り返し地点を過ぎ、これから迎える「介護」の問題が、まだ現実的ではないにしろ、ぼんやりと心の片隅に存在し始める。
その曖昧で不安定な時間は「介護前夜」と呼べるかもしれません。
私自身も、親はまだ元気ですがたびたび体調が悪いことが続いたり、気にかかることも増えてきて、日々の小さな変化に気づきつつも「まだ大丈夫かな」と自分に言い聞かせるような日々を過ごしてきました。
でもその中で、少しずつ増える心配や、将来への漠然とした不安に押しつぶされそうになる瞬間があるのも事実です。
この記事では、同じように「まだ介護じゃないけど不安」という気持ちを抱えるあなたに寄り添いながら、
・その気持ちをどう整理していくか
・いざ介護が始まった時に慌てないために今できること
・介護の基本的な選択肢と心構え
を一緒に考えていきたいと思います。
これから先の長い介護の道のりを乗り切るために、まずはゆるやかに「備える気持ち」を一緒に育てていきましょう。
1. 親の老いに気づいたとき、心に生まれるモヤモヤ

1-1. 親の小さな変化に気づく瞬間
年を重ねるのは誰にとっても自然なことですが、ある日突然、親の小さな変化に気づき、ハッとすることがあります。それは、親の老いを意識する最初の瞬間かもしれません。
例えば、
- いつも几帳面だった母親が、薬の飲み忘れや同じ話を繰り返すようになった。
- 活発だった父親が、外出を億劫がるようになり、家で過ごす時間が増えた。
- 会話の途中で、聞き返すことが多くなった、あるいは言葉が出てこない瞬間が増えた。
- 料理の味が変わった、あるいは焦がすことが増えた。
- ちょっとした段差でつまずくようになった、あるいは歩く速度が遅くなった。
- 以前は難なくこなしていたスマートフォンの操作に戸惑っている。
これらの変化は、ひとつひとつは些細なことに思えるかもしれません。
しかし、それらが重なることで、「あれ?もしかして、親も年を取ったのかな?」という漠然とした不安や寂しさ、そして「自分は親のために何ができるだろう?」という責任感のようなものが、心にじんわりと湧き上がってくることがあります。
これらの気づきは、親との関係性を見つめ直し、これからのことを考える大切なきっかけとなるはずです。
1-2. 自分の気持ちに気づくことの大切さ
親の老いを感じると、私たちはつい「自分が頑張らなきゃ」と無理をしがちです。
けれど、まずは「自分はどう感じているか」「どんな不安や戸惑いがあるか」に正直になることが大切です。
不安を感じるのは自然なこと。
それはあなたが親を大切に思っている証拠です。
私も、親に対して「まだ大丈夫」と自分に言い聞かせる一方で、夜寝る前に考え込んでしまうことがよくありました。そんな時は、誰かに話すことで気持ちが整理できることもありました。
同じ年代の親を抱える友人に話すと、「うちも同じようなもの」とか、「調子の悪い時期もあるよね」とか、それに対して不安を感じている気持ちも共有できたりして、「話す」ことができる相手がいると、心はずっと軽くなるのです。
2. 介護前夜の心の準備とは?

2-1. 介護が現実になる前の情報収集
まだ介護の必要がない今のうちに、介護保険や地域のサービスについて知っておくと、いざというときに慌てずに済みます。
介護保険制度は65歳以上が主な対象ですが、40歳以上でも特定疾病があれば利用可能です。
例えば、訪問介護やデイサービス、ショートステイなど様々なサービスがあります。
私も、最初は全く知らなかったのですが、地域の包括支援センターの無料相談などがあることを、詳しい友人に教えてもらったりすることで、意外と気軽に情報を得られることを知りました。
2-2. 親との自然な会話を心がける
介護の話はセンシティブです。
急に切り出すと親が警戒してしまうこともあります。そうでなくても、きっとほとんどの親は子供に心配をかけたくないがために、「全然大丈夫。自分たちでどうにかするから心配いらない。」と突っぱねられてしまうこともあります。
だから、普段の生活の中で、ふとした会話から「最近どう?」と聞いてみたり、「ちょっと困っていることはない?」と優しく問いかけてみることが必要なのかもしれません。
私の場合、母のちょっとした変化に気づいた時に、「お母さん最近疲れてない?」と聞いてみたら、少し安心した表情を見せました。
会話の中で親の気持ちを尊重しながら、自分の不安も少しずつ伝えていくことが大切なのかなと思いました。
2-3. 自分の生活の充実を忘れない
介護は長期戦になりがちです。だからこそ、自分の健康や心のケアは欠かせません。
私の場合、まだ本格的な介護には至っていませんが、親の具合が悪かったり自分のストレスや体調不良が重なり、心身ともにダメージをくらった時期もありました。
私は独身ひとり暮らしで、兄弟もないため、親のことを一緒に考えてくれる人はいません。その不安が重く心にのしかかっていました。
ですが、そんな時期を乗り越えて、まだやってきてもない未来の心配をしても仕方ないと、趣味の時間や友人と過ごす時間も大切にして、自分のリフレッシュ時間を確保することで少しづつ回復していきました。
そんなふうに自分をまず労わることで、親への対応も落ち着いてできるようになりました。
3. 介護前夜にやっておきたい具体的な準備

3-1. 親の健康情報の整理
お薬手帳、病院の連絡先、持病やアレルギーの情報を一覧にしておくことが重要だと、介護に詳しい友人から聞きました。
突然の入院や通院時に、家族間で情報を共有しておくと慌てずに対応できます。
これについては、母はわりと几帳面にノートに記載しているので助かります。
同居しているわけではないので、毎日の変化には気づきづらいですが、ときどき親のところに出向く際にはよく話を聞くようにしています。
3-2. 財産と保険の見直し
親の年金、貯蓄、保険の状況を把握しておくことは、介護費用を考える上で欠かせません。
FP(ファイナンシャルプランナー)に相談して、介護費用のシミュレーションをしてみるのもおすすめです。
親の介護費用は平均500万円とも言われています。親自身の年金や貯蓄、保険等でまかなえればいいのですが、うちの場合とても足りないことは把握しています。
「親の介護は親のお金で」という基本中の基本がままならないとき、どこまで負担すればいいのか?
そこはなかなかひとりで考えてどうにかなることではないですが、そういった不安をひとつひとつ減らしていくために、お金の勉強をはじめ投資で効率的にお金を増やしていくことを学びました。
まだ親が若ければ、財産について深い話をしたり、どこまで介護するのかを話しておくことはとても重要なことだと思います。
3-3. 住環境のチェックと改善
家の段差やトイレ、お風呂場の安全対策も、介護が始まる前にチェックしておくことも大切です。
手すりの設置や滑り止めマットの導入は、転倒防止に効果的です。
親が「まだ必要ない」と言っても、やんわり提案し、少しずつ慣れてもらうのがポイントです。
4. もし介護が必要になったら?選べる主な介護サービスと選択肢

4-1. 介護保険制度の基本
介護保険は、65歳以上の高齢者や40歳以上の特定疾病の方が対象で、介護度に応じてサービスが利用できます。
サービスには訪問介護(ホームヘルパーの訪問)、デイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期施設利用)などがあります。
私も先日友人から、介護認定を受けるための地域の包括支援センターの無料相談があることをやその手続き方法などを教えてもらったので、これから考えていきたいと思っています。
4-2. 在宅介護を支えるサービス
できるだけ自宅で自立した生活を維持できるように、訪問介護やリハビリ支援、介護用品の貸与、住宅改修など多様な支援があります。
本格的な介護が到来したら、家族の負担を減らすためにもぜひ積極的に利用を検討しましょう。
4-3. 施設介護の種類と特徴
自宅介護が難しくなった場合、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設(老健)など施設入所が選択肢となります。
施設介護にはそれぞれ特徴があり、選ぶ際には親の健康状態や経済状況、希望をよく話し合うことが大切です。
特別養護老人ホーム(特養):公的な施設で、重度の介護が必要な人が優先されます。入所待ちが長いことが多いですが、費用は比較的抑えられます。
有料老人ホーム :民間運営の施設で、設備やサービスの質が高い反面、費用は高めです。自立度が高い高齢者向けのところも多くあります。
介護老人保健施設(老健): 病院と施設の中間的な役割を持ち、リハビリを重視する方に向いています。短期間の入所が多く、在宅復帰を目指す人に適しています。
こうした施設の情報は地域包括支援センターやケアマネジャーに相談すると具体的な案内が受けられます。
5. 介護の現実と向き合うための心構え

5-1. 自分だけで抱え込まない
介護は家族だけで抱え込むと、心身ともに大きな負担になります。
周囲の助けを借りること、地域のサービスを活用することは決して「甘え」ではありません。
私もいざという時には、仲のいい従兄弟や親戚と連携し、地域包括支援センターに相談の上、ケアマネジャーなどにも頼りながら進めていきたいと思っています。
家族全員が少しずつ負担を分担できる体制を作ることが長続きの秘訣です。
5-2. 親の尊厳を尊重する
介護が始まるとどうしても親の「できない部分」に目がいきがちですが、できるだけ「できること」に目を向け、本人の意思を尊重する姿勢が大切です。
例えば、食事の介助は必要でも、自分でできることは本人に任せる。
着替えも全部やるのではなく、できる範囲を見守りながらサポートする。
こうした細やかな配慮が、親の自尊心を守り、介護者のストレス軽減にもつながります。
5-3. 長期戦を見据えた体調管理と休息
介護は身体的にも精神的にも消耗します。適度な休息をとること、自分の健康管理は最優先です。
介護者向けのサポートグループに参加する、定期的にリフレッシュの時間を持つ、趣味や友人との交流を大切にするなど、息抜きの工夫をしましょう。
6. まとめ:介護前夜から少しずつ備えることで、未来は変わる

親の老いを感じ、介護への漠然とした不安を抱くのは、決してあなた一人ではありません。
むしろ、多くの50代・60代が同じように戸惑いながらも、少しずつ準備を進めています。
今回お伝えしたように、介護は「突然やってくるもの」ではなく、徐々に変わっていくプロセス。
その過程で大切なのは、自分の気持ちを大切にしながら、親と家族と一緒に話し合い、必要な準備を少しずつ進めていくことです。
介護保険や地域のサービスを知り、親の健康情報や住環境を整え、心の負担を軽減する工夫をすることで、いざという時も慌てずに対応できるようになります。
もし介護が必要になったとしても、家族や専門家、地域の力を借りながら乗り越えていけることを、ぜひ覚えておいてください。
未来は変えられます。
そして、あなたも親も、いつか必ず訪れるその時を、自分らしく穏やかに過ごせる日々にできるよう、これから少しづつ向き合っていきましょう。